だれしも歳を取ります。当たり前です。ところが、家づくりの場面では意外に忘れられがちです。 きっと家を建てるときは、ほとんどの施主さんが働き盛りだからでしょう。元気なときには自分が高齢化した姿は思い浮かばないものです。
でも今35歳の人でも30年後には65歳、40年後には75歳になるのが現実です。そのとき家を建て替えられるでしょうか。 土地と多くの金額を用意し、詳しい打ち合わせによる承認までの時間、さらに仮住まいの不便などを考えると、家づくりは一生に2回も3回もできることではありません。一度の人生に、家づくりは1回ではないでしょうか。 おそらく30年後も40年後も、同じ家に住んでいるのではないでしょうか。
洋風のデコラティブな内装は飽きがこないでしょうか。畳のない家は、どうのように感じるでしょうか。生涯、安心して健康に暮らせる家が思い浮かびませんか。風が柔らかく頬をなでる家、畳や障子でくつろげる部屋、 家族団欒の場所。そのような住まいなら、歳を取っても安らかに過ごせそうです。これが介護建築です。
実は目新しい発想ではありません。古くから日本人が暮らしてきた家に息づいていた考え方です。 残念ながら戦後の効率優先の時代に日本人が捨て去ってしまったものです。介護建築は『和風建築の長所を 見直すことから考えると理解しやすい』とお客様は話しています。
ところで最近、京都にある伝統の町屋が注目されています。 以前は「古屋付きの土地」「築年数85年で本当に住めるの」 と冷ややかだった見方が、なぜ変わったのでしょうか。「懐かしくて、それでいて新しい感じがする」 「いつまでも飽きず、無理なく暮らしていけるように思う」「季節感があって、とても気持ちがいい」と入居した人は、 誰もが喜びにつつまれています。
住宅は、外観と間取りと素材から、和風と洋風に区別されていますが、 日本人で、家の中で靴を履いたまま、ホテルと同じように過ごしている人がどれほどいますか。 難しい理屈ではなく和風建築は、改めて本来の魅力を認められてきているのです。