日本住宅新聞 2003.8.25 から
介護建築アカデミーを開講 10月から来年3月まで13日で
地域の家守り工務店として、高齢者・障害者向けの家づくり提案のために「介護建築研究所」を設立したエービー企画開発(株)(東京都・豊島区、阿部常夫社長)が、来たる10月から、工務店向け研修「建築介護アカデミー」を開講することになった。
和風住宅を中心に20年の実績を持つ同社が「介護建築」に目を向けるようになったのは、阿部社長自身、肉親の介護を経験したのを始め、交通事故の後遺症で首下全身麻痺になった障害者の住宅や介護ショップ・ヘルパーステーションの内装工事等を手がけたこと。さの過程で弁護士やケアマネジャー、病院関係者、福祉器具メーカー等との連携も進んだところから、広くノウハウを提供するとともに、共に「介護建築」に取り組む仲間を増やすことがアカデミー開設のねらい。
期日は10月11日(土)から来年3月14日(日)までの6ヵ月間で、1ヵ月当たり2日の計13日。
介護建築に関する講座は阿部常夫社長が行い、売上増進のための講座を売上増進研究会主宰の栗本唯氏が担当する。また、障害を持つ顧客による特別講座「住宅改修経験と介護建築への提言」等も予定している。さらに、課題達成のためのフォローアップも充実させる。
同社では講座を受講することにより、?介護建築の観点で設計・施工するにあたって、商品企画等のための費用や時間の負担を少なくできる?住宅改修を希望している顧客から特命で受注できる?独自の売上増進のしくみを開発運用して、円滑に増収増益を実現できる、等の効果が生まれる、としている。
問い合わせ=エービー企画開発(株)介護建築研究所
TEL 03・3971・6712、FAX 03・3971・7724
日本住宅新聞 2003.7.25 から
「寄稿」36年目の再発見
エービー企画開発(株) 介護建築研究所 阿部 常夫
建築の仕事に従事して36年が過ぎました。
月日の経過は早いものです。若いころは気にもしていませんでしたが、40歳ころから建築をさせていただいたお客様のご家庭について、何かと感じることが増えてきました。
アフターも兼ね盆暮れのご挨拶廻りをすると「よく来てくれた」と喜んでいただき、お昼などご馳走になりながら、ご家庭の成長や世間話をさせていただく機会も増えると「建築の仕事は本当にい仕事だ」なんて心地よい思いを経験しました。でも良いことばかりではなく、そこに居るはずが居なかったり、離婚していたり、子供が不登校だったり家庭崩壊しているお客様もずいぶんいました。
幸せ家族は今でもお付き合いさせていただいてありますが、そうでない家族は疎遠になってしまいます。このような家庭を振り返り何か原因があるのではと考えてみると、会話も途切れ途切れ、掃除や整理整頓してなく、洗濯物は皺だらけ、子供たちはまともな挨拶もしないで自分の部屋に入り込んでしまう。きちんと対応していただけないご家庭だった。思えば訪問の際、佇まい(家)もなんとなく寂しく思えたような気がします。
この頃の著書に「家をつくって子を失う─中流住宅の歴史 子供部屋を中心に─」(松田妙子著)があります。この本もこの頃出版されたことは偶然ではないはずです。家の造り法と住まい方が一致していなかったということになるのでしょう。
家族と住まいの関係が問題になり始め、次に少子高齢化が時代とともにクローズアップされ始めました。私の身内で、寝たきり老人と老人性痴呆症老人と時期は違うが介護のため、家族一同大変な思いをしました。
私の親友で医療関係者がおり、彼曰くこれからは在宅医療(介護)の時代に入ると聞かされたのが平成2年頃でした。そういえば弊社のお客様も年々再々年をとる。友人の知恵を借りつつ、一大決心で平成3年にシルバーサービス展に出展、工務店では第1号。
出展して在宅介護(在宅介護に必要な住宅改修)の必要性を訴えたが、どなたの耳にも届きませんでした(ちょっと早かった、大失敗だったかな?!)。
在宅介護の必要性を提案しながら友人勤務の亀田総合病院内介護ショップ・フードコート(レストラン)・木更津介護ショップ兼ヘルパーステーションなどの企画及び内装工事を手がけました。
また私どもの近隣のお客様が交通事故に遭遇、その事故で首下全身麻痺となり入院。しばらくすると病院は、これ以上回復は見込めないので、自宅療養するようにと追い出されるように退院せざるを得ない。退院するには自宅を障害者用に改修しなければいけない、と弊社に相談がありました。「阿部さん介護住宅のことやってましたね」と相談者は息子さんでした。
介護住宅を手がけていたとはいえ、首下麻痺の障害者は初めて。本人の不在のなか試行錯誤で何とか仕上げることができました。平成7年のことでした。
私はこの仕事を通して、今まで以上に介護について真剣に考えるようになり、住まい造りの原点に立ち返ることができました。
住まいは雨風をしのぐだけでなく、そこに住む家族の人生がかかっています。それほど住まいとは大切なものと改めて認識。仕事を始めて36年、建築の価値を再発見しました。