木の柱と土壁の家、それと鉄筋とコンクリートの家。もちろん見かけは違いますが、それ以上に違うのが空気の柔らかさです。 木造住宅はふんわりとした空気が漂います。でも、測定機器で証明するのは困難です。介護建築で重視しているのは、あくまでも体感です。 住まい手の言葉には表わしにくい、繊細な気持ちへの影響こそが優先する基準です。
実際、戦後の家づくりでは温度、湿度といった数値化できる要素は考えられてきましたが、 空気の柔らかさといった数字に表れないものは無視されてきたのではないでしょうか。 しかし介護建築の家づくりには、データを測定できないことが多いのですが、住み心地を大切なことだと考えています。
流行があるのは、服装や健康食品に限りません。注文住宅にも傾向があります。 バブル景気と世の中が呼ばれていた頃は、 玄関ホールと居間の上の方に、吹き抜けとトップライトの取り付けが重視されていました。 「アメリカ映画にでてくる邸宅が素晴らしい」「美しさが、すべてに優先する」「光あふれ夢のある空間」など、 自らのデザインセンスを押しつける業者がいました。
流行ですから、いつかは変わります。その後どうなったのか知っていますか。 「冷暖房に時間がかかる」「照明器具の位置が高く、怖くて電球が取り替えられない」 「家の中心が、はっきりしなくて落ち着かない」と後悔し悩んでいる施主さんが多いと聞いています。
和風建築の魅力は、日本の高温多湿で、梅雨のある気候に適した自然素材である木・紙・土を生かすことです。 光は、同じように降り注ぐように見えるかもしれません。でも吹き抜けと和室の障子を通した光では、柔らかさが違いませんか。