昨今はバリアフリーが強調されていますが、日本人は江戸のころから先刻承知していたのです。 なにしろ部屋と部屋を区切っているのは障子と襖しかないのですから。 お年寄りの知恵が大事にされた江戸らしい家の造りです。
江戸の民家はまた多目的空間でもありました。日頃は6畳と8畳に仕切って、一方は茶の間、 他方は寝床にしているのですが、人の集まるときには襖を取り払って大広間にもできるのです。 現代日本人のように、ここはリビング、ここは寝室と、使用目的をひとつに定める必要がなかったわけです。
誤解のないように強調しますが、江戸時代の家と庶民の知恵を美化してはいません。 火災と地震への対策、 防音の効果にしても、性能は比べるまでもなく、現代の家づくりは進化しています。介護建築では、その最新の技術をとりいれながら、 日本独自の伝統文化の中で必要な要素を選び、新築することを助言しています。
最近の相談内容ですが、住宅雑誌の記事を持ってきて「リビングは15畳で南側に出窓、対面型キッチンで食品庫は必要、車庫は2台」と プランに関しての要望を興奮して話す施主さんがいました。プランはとても重要であり繰り返し打ち合わせをおこないますが、 介護建築の家づくりでは、必ず家族の合意と方向を確認しています。
「家族で住まいの新築について語りあい、全員が納得していますか」「クルマは完成品ですからショールームで買うものですが、 注文住宅は施主さんの計画・仕様・予算・工期・アフターケアの条件にもとづき建てるものであり、 使い捨ての商品ではありません。どのような生活を希望していますか」「人生の最終場面で誰にでも訪れる在宅介護の日々、 とまどいと不安を感じないために、どのような家を考えていますか」。
家族の幸福をつつみこむ状態と生活の場面を、落ち着いて想像してください 。注文住宅を考える最初の一歩です。 介護建築研究所は、適切な住まい方への改善を提案し、明るく・楽しく・暖かな暮らしに配慮する注文住宅を新築するとともに、 施主さんが安心して暮らしていけるように末永く見守り続けます。